
《降り立つ時間ー雨と靴》
Descending Time — Rain and Shoes
- 制作年
- 2024
- 素材
- 鉄、ベアリング、機械部品
- サイズ
- H300 × W240 × D120 cm
- 動作
- 手動ウインチで巻き上げ、約8時間かけて降下し、靴の中へ新聞紙を運ぶ
雨の日、濡れた靴に新聞紙を詰め、乾くのを待つ。その行為を、私は「人間が自然を嫌でも意識してしまう時間」と捉えた。本作は、この日常の小さな出来事を彫刻的なスケールへと拡張し、身体と素材が交わるその時間を可視化する試みである。高さ3メートルの鉄の構造体に組み込まれた歯車装置は、手動ウインチで巻き上げられ、そこから8時間をかけて降下し、靴の中へと新聞紙を運ぶ。作品は「見るもの」であると同時に「待つもの」として成立し、鑑賞という行為そのものを日常の時間軸の中に溶け込ませる。機械式時計の発明以降、人間は天体の運行や気候の変化を観察せずとも時を刻めるようになった。自然の周期から切り離された都市の時間は加速し続け、身体感覚との乖離を深めてきた。本作が提示する8時間の降下は、そのような時間の外側にある、制御も短縮もできない持続である。素材である鉄は、自然から採掘され産業によって精錬された物質として、人間と自然の時間的交渉の痕跡を静かに帯びている。